シニアが最初の一歩を踏み出せない2大理由【シニアからの楽器③】

こんにちは、シニアブロガーのフレです。前回の続きです。ギターとかピアノとかなにか楽器が弾けたらいいな~、趣味でなにか楽器を始めてみたい!と思っているけど躊躇している・勇気が出ない・きっかけがないという、シニア(中高年・定年前後)の方へ向けて、「シニアからの楽器、初めの一歩の踏み出し方【第3回】」です。

前回は「シニアから楽器を始める5つのオススメ理由」についてお話ししました。良いこと満載でした!今回は「シニアが最初の一歩を踏み出せない3大理由と対策」について、私の経験も踏まえてお話しします。

シニアのよくある言い訳トップ5

私自身もそうでしたが、大人、特に中高年・高齢者・老後と言われるシニアになると、楽器を始めてみたいと思っても、若いころとは違う「一歩踏み出せない言い訳」をしてしまいます。そのトップ5は次のようなものです。

よくある言い訳トップ5

①いまさらこの年齢では遅すぎるのでは?
②この年で周りに知られたら恥ずかしい

③先生との相性がよいかどうかわからず不安
④生徒さん同士うまくやっていけるか不安
⑤年金生活でお金がもったいない

というものです。この他にも、

・音譜がまったく読めないけど大丈夫かな?
・教室は若い人ばかりで、仲間に受け入れてもらえないのでは?
・音楽の才能がないのでムリだと思う
・途中で挫折したら止めると言いづらい

などがあります。

実はこうした一歩踏み出せない主なワケは大きく3つに集約されます。もちろん、シニア特有の「年齢による理由」もありますが、もっと人間に共通する根本的な大きなワケがあります。

このワケを知っておくだけで最初の一歩が比較的簡単に踏み出せるようになります。私がそうであったように。

一歩踏み出せないワケはたった2つ

シニアが一歩踏み出せないワケは、年齢リスク以外では大きくたった2つだけです。それは、人は誰でも(特に大人・高齢者になると)次のようなリスクを恐れるからです。

2大リスク

①対人リスク
 他人から批判・批評・否定・拒絶される怖さ

②経済リスク
 お金や時間を失う怖さ

①対人リスク

一歩踏み出せないワケの1つ目は対人リスクです。これは一言でいうと、他人から批判・批評・否定・拒絶される怖さです。つまり、どう思われるかわからない・どう見られるかわからない・受け入れてもらえない・失敗したら何を言われるかわからない、という不安です。例えば私の場合、

48歳でクラシックギター
52歳でハーモニカ(ブルースハープ)
60歳でアコースティックギター
61歳でエレキギター
62歳でボーカルレッスン

の教室に通い始めました。特に60歳超えてからこうした教室に通い始めるにはかなり勇気が要ります。ものすごく迷ったと言ってもよいでしょう。体験レッスンへ申し込むだけで1年以上かかったものもあります。

  • この年になってからなんだか恥ずかしい
  • 生徒さんは若い人ばかりやったらイヤやな~
  • 他の生徒さんにバカにされるのではないか?
  • この年からでも仲間はできるのかな?
  • 先生に偉そうに言われたらイヤやな~
  • 楽譜読めずにバカにされそう
  • 一度体験レッスンに行ったら断りにくいのではないか?
  • どんな先生やろ?どんな生徒さんがいるんやろ?

といった不安でした。とどのつまり、「自分の居場所はあるのかな?」という不安感です。もし、ギター教室やピアノ教室に通い始めて、先生や先輩生徒さんたちが温かく迎えてくれて、やさしく親切に教えてくれると初めからわかっていたら、こんな心配は不要になります。

それがわからないからとても不安になり、そのリスクを抱えたままだとなかなか一歩踏み出すことができなくなるのです。特に繊細気質の人は、この辺りを深く先読みしすぎてしまい行動を起こせない傾向があります。

②経済リスク

一歩踏み出せないワケの2つ目は経済リスクです。これは一言でいうと、お金や時間を失う怖さです。別の観点から言うと、リターン(対価)が確実でない不安です。中高年・高齢者になると特に人生の残り時間が限られるため切実です。

定年後・老後のお金の心配は余裕のある人とない人で状況は分かれます。ただお金に余裕があろうとなかろうと、人生の残り時間は誰にも等しくあまりありません。残り時間が少ないがゆえに、楽器を始めるという新しいチャレンジがもし上手くいかなかったら「無駄な時間だった、やめておけばよかった」と後悔するかもしれません。

さらに、もし高価な楽器を買ったりそれなりのレッスン料を支払ってもやめてしまったら、その失ったお金を若いころの様に取り戻す時間があまり残されていません。楽器の値段はピンキリですが、数万円~数十万円以上にもなるものもあります。エイや~で楽器に数十万円支払ってやめたらシャレになりません。

こうした、楽器を習い始めることによる、

・お金を失うリスク
・時間を失うリスク

・リターンが不確実なリスク

は、誰だって怖いし無意識に避けようとしてしまいがちです。特にシニアになると、

「今のうちにやっておかないと後悔する」VS「今さらやっても失敗したら後悔する」

の後悔合戦を毎日戦っているようなものです。では、なぜこうした対人関係や経済損失の不安が心をよぎるのでしょう?

なぜ不安になるのか?

私たちは年齢を重ねるごとに不安やリスクに対してそれを回避する心が強くなっていくようです。私も若いころの様に後先考えずにゴー!なんてことはほとんどなくなりました。

繊細な人でなくてもこの傾向はあります。特に、60歳過ぎていわゆる老後と言われる年齢になってからは顕著です。ではなぜこうした不安が心を占領するのでしょうか?対人リスクと経済リスクについてそれぞれ見ていきましょう。

対人リスクを恐れるワケ

対人リスクを恐れるのは実は人類の本能です。性格や生まれ育った環境・教育などにもある程度左右されると思いますが、根底にあるのは私たちの本能です。

もともと太古の昔においては、他人からの批判・批評は仲間外れ(いじめ)に発展し、共同で狩猟生活を行っていた人類にとっては、

仲間外れ=狩りに参加できない=食料が得られない=死

に直結しました。つまり他人と上手くやるのは生きていくうえで必要な絶対的スキルだったのです。

例えば、ギター教室に通い始めても他の生徒さんと仲良くできず受け入れてもらえなかったら自分の居場所がありません。実際はたださみしいだけ、孤独なだけで実害はないのですが、人類の本能がこれを死に直結して考えるようになっているから怖いのです。

したがって、対人リスクは人類が進化の過程で身に着けた防衛本能なので避けて通ることができません。避けては通れませんが、こうした不安を和らげて一歩踏み出す方法(考え方)はあります。

経済リスクを恐れるワケ

経済リスクを恐れるのは、結果として支払う金額や費やす時間に見合う対価=リターンが不明だからです。例えば、もし確実に1億円当たるとわかっていたら借金してでも1000万円持って、大阪梅田第3ビル前の宝くじ特設売り場へ走ります。

ただ、現実の社会ではリターンが保証されていて確実なものはありません。つまり、あらゆる行動は失うことが前提です。こうした経済損失のリスクも避けて通ることはできませんが、考え方を変えると大きなリターンが得られることに気が付きます。

こうした対人関係と経済損失の2大リスクに対処できる不安を和らげるポイントについて、シニアの私なりに考えてみました。

不安を和らげる考え方

中高年や高齢者になってから楽器を始める場合、不安を和らげるポイントは、対人リスクと経済リスクについてそれぞれ4つずつあります。この考え方ができるようになると最初の一歩が踏み出しやすくなります。

対人リスクの4つのポイント

まずは対人リスクの不安を和らげるポイントは、

対人リスクの不安を和らげるポイント

①現代では仲間外れにされただけでは食べられずに死ぬことはまずない

②批判、批評され孤独になってもただそれだけでは餓死しない

③なぜ他人からの批判や批評が怖いのかは単に人類の生存本能

④このネガティブ感情がなければ人類は滅亡していたかもしれない

1つずつ見ていきましょう。

①現代では仲間外れにされただけでは食べられずに死ぬことはまずない
自分の居場所がないと確かに寂しい・悲しいですが、なぜそれが心を苦しめるのかというと、昔はそれが死に直結したからです。死ぬことを恐れる防衛本能がそう思わせるのです。現代はそのことが原因で死ぬことはありませんから本当は気にすることではないのです。

②批判、批評され孤独になってもただそれだけでは餓死しない
同様にただ孤独になるだけでは死ぬことはありません。孤独が死に直結していた太古の昔からの人類の防衛本能が心を苦しめているだけです。

③なぜ他人からの批判や批評が怖いのかは単に人類の生存本能
要するに、他人からの批判や批評が怖いのは私やあなたの心が弱いからではなく、単にすべての人類に共通する生存本能だからということができます。

④このネガティブ感情がなければ人類は滅亡していたかもしれない
もし、こうしたリスクを恐れる感情がなかったら人類は滅亡していたかもしれませんね。他人と上手くやるというのは、生き延びるためにもっとも大切なスキルだったと言えます。つまりリスクを恐れる気持ちは私たちにとって必要なものです。

必要であると知ったうえで、極端に恐れる必要はないことも知っておけば行動に移しやすいと思います。もし上手くいかなかったとしても死ぬことはないのですから。特に繊細気質の人はこうしたことを深読みして慎重になり過ぎて、なかなか一歩が踏み出せません。

経済リスクの4つのポイント

次に、経済リスクの不安を和らげるポイントは、

経済リスクの不安を和らげるポイント

①失っても許容できる金額を決めておく

②得られる対価(リターン)を明確にする

③モノより体験にお金を使うと幸福感が持続する

④自己投資と割り切る

1つずつ見ていきましょう。

①失っても許容できる金額を決めておく
例えば、あなたがもし失ってもなんとか我慢できる金額が5万円だとしましょう。仮にギター教室に通うとして月謝が1万円だとしたら、5万円÷1万円=5か月間通うことができます。

この5か月の間で今後のことを決めればいいわけです。まったく面白くないかもしれないし、先生とも気が合わないかもしれません。反対に、先生も生徒さんもいい人ばかりで仲間も出来て、人生が変わるくらいとても楽しいかもしれない。こればっかりは1回だけの体験レッスンではわかりかねます。

失っても許容できる金額の範囲内でこうした自分の判断基準をチェックする、と最初に決めておけばリスクはかなり抑えられます。5万円の受験料みたいなイメージです。

②得られる対価(リターン)を明確にする
楽器を習う、教室に通う目的を明確にすると、求める対価(リターン)も明確になります。例えば、あなたが求めているものは次のうちどれでしょうか?

  • 楽器がうまくなりたい
  • 弾き語りしてみたい
  • 出会いの場が欲しい
  • 仲間を作りたい
  • 日々の充実感を得たい
  • 成長したい
  • 目標を持ちたい

など人の目的は様々です。もちろん楽器がうまくなりたいという人もいれば、やることがないのでとりあえず何か楽器を始めてみたいという人もいます。楽器自体が目的ではなく単なる仲間と出会う手段と考えている人もいます。

従って、経済的に費やす費用(月謝や楽器代)が高いか安いかは求める対価(リターン)によって決まります。1万円出して楽器は全然上手くならないけど生涯の友ができたのなら大満足というパターンもあります。ぜひ、目的を自分なりに明確にしてみましょう。

繊細シニアの私でも、うじうじ悩んで考え過ぎているときでも、一旦目的・目標が明確になればけっこう大胆にチェレンジできるようになることがよくあります。

③モノより体験にお金を使うと幸福感が持続する
モノとは例えば車や家や時計や洋服などです。手に入れたときは幸福感満載です。こうしたモノは「地位財」と呼ばれます。ある一定の地位を獲得することによって幸福感を得る方法です。ただ、この地位財による幸福感は長続きしません。せいぜい数か月とか1~2年でしょう。中には手に入れた瞬間に飽きてしまうこともあります。

一方、モノ(地位財)ではなく体験にお金を使うと幸福感が持続すると言われています。体験とは、旅行とかイベント、ライブコンサート、そして楽器を習ったり教室通ったりすることもこれに当たります。体験は「非地位財」と呼ばれます。

数十年前に行った旅行の楽しかった思い出は未だに持続していますし、私の場合ギター教室での仲間との出会いやイベントは幸福感の塊のようなものです。楽器を習う、教室に通うという体験はこうした目に見えないリターンがあることを知っておけば行動を起こしやすくなります。

残り時間の少ないシニアの人は、もちろんモノより体験にお金を使う意識を持てば行動を起こしやすくなります。

④自己投資と割り切る
お金の使い方には5つのパターンがあります。消費、浪費、貯蓄、お金の投資、自己投資です。この内、楽器を始める・教室に通うことを「自己投資」としてとらえると経済的損失はほとんどないことに気が付きます。それぞれを簡単に説明すると、

消費

消費は衣食住などの生活費です。快適な生活や生存欲を満たすものです。必要不可欠と言えます。

浪費

浪費は賭け事や遊興費、散財のことです。時間つぶしであったり、依存欲を満たしたりするだけの無目的なお金の使い方です。

貯蓄

貯蓄は銀行預金やタンス預金のことです。「貯める」というお金の使い方です。

お金の投資

お金の投資は株や投資信託などお金を増やすことを目的としたお金の使い方です。お金が減ることもあるので常にリスクがあります。

自己投資

自己投資とは自分の経験・体験・スキルアップ・人脈作りなど自分が成長することを目的にしたお金の使い方です。目先のお金は減りますが、長期的には目に見えない自分の総財産が増えていることに気が付きます。

楽器を始めたり音楽教室に通ったりすることは正にこの自己投資に当たります。

自己投資の最大のリターンとは?

自己投資とは一般的には、学習・体験・読書・趣味・習い事などがそれに当たります。自己投資はどれを行うにもお金がかかりますが、その特筆すべき対価(リターン)は次のようになります。

自己投資のリターン

①自己成長
②充実感
③感動
④幸福感の持続
⑤他者とのつながり

これらの対価は、消費や浪費・貯蓄・お金の投資でも得られないことはないですが、最も大きな違いは「長期的持続」や「記憶に残る」ことです。旅行がその代表です。また、音楽活動では皆で頑張ったライブ活動や発表会などがそれにあたります。

このように、シニアから楽器を始めるときに、経済損失リスクの不安があるならこう考えればOKです。それは、上手くいっても失敗しても、このチャレンジは人生を充実させるための自己投資であると割り切る、です。お金を出して体験を買うという考え方です。これで一歩踏み出しやすくなります。

まとめ

今回は、「繊細シニアが最初の一歩を踏み出せない2大理由と解決策」についてお話ししました。

もしあなたが、「結果が確実に出るとあらかじめ分かっていることしか」やらないのであれば、シニアからどころか死ぬまで何も行動できなくなります。行動することで新しい出会いや偶然が生まれます。その出会いや偶然が人生を変えてくれると言っても過言ではありません。

むしろ人生のほとんどは、未来が確かなことよりも出会いや偶然でできていると言えます。その出会いや偶然が起こるまで繰り返し繰り返し、一歩踏み出して行動するだけです。その行動は決して無駄にはなりません。

大リーグ二刀流の大谷翔平選手も言っています。周りから何と言われようがやりたいことをやることは、結果として無理だったとしても無駄にはならない、と。残り時間の少ないシニアであっても、特にこの「すべては無駄にはならない」という考え方が自分で納得できれば、第一歩を踏み出しやすくなるのではないかと思います。

次回はその第一歩目を踏み出すきっかけにもなる「シニアが楽器に興味を持つ具体的な方法」についてです。